マレーシア警察、マラッカでデビットカード複製工場を摘発:国際ポンジ詐欺の影に「フォーブス・プライベートバンク・モナコ」
クアラルンプール発 – マレーシアのマラッカ州警察は、2025年4月28日、日本の闇市場を標的としたデビットカード複製グループに対する家宅捜索を実施した。
*写真:ズルカイリ(Dzulkhairi,左)は2025年4月28日の記者会見で、作戦中に押収された様々な複製デビットカードを説明した。-ベルナマ通信写真
この捜索は、単なるカード詐欺にとどまらず、モナコを拠点とする偽のプライベートバンクが関与する大規模な国際詐欺ネットワークを暴く端緒となった。
The Borneo Post(ボルネオ・ポスト)、Free Malaysia Today(フリー・マレーシア・トゥデイ)、The Straits Times(ストレーツ・タイムズ)が報じた、日本の闇市場を標的としたデビットカード複製グループに対するマレーシアのマラッカ警察の家宅捜索に関する続報である。
偽銀行の正体:高金利で投資家を誘うポンジスキーム
フォーブス・プライベートバンク・モナコ(Forbes Private Bank Monaco)は、表向きはモナコに本拠を置く高級プライベートバンクを装っているが、実態は日本人実業家・宇治田友紀氏が主導する詐欺組織だ。同行は4%から8.5%という魅力的な高金利の定期預金を宣伝し、顧客に仮想通貨での入金とVISAデビットカードの発行を約束する。しかし、調査によると、同行はコモロ諸島から取得した偽の銀行免許しか持たず、SWIFTコード(FOPMKMK1XXX)は無効。bank-code.netのデータベースでは「使用すべきでない」と明確に警告されている。これにより、通常の国際送金は不可能で、資金は非合法ルートに流れる仕組みだ。
宇治田氏は、英領バージン諸島に登録されたY System Corporationを通じて全株式を保有し、銀行の運営を統括。フォーブス・プライベートバンク・モナコのウェブサイトではビットコイン預金とデビットカード利用を強調し、主に副収入を求める日本人投資家をターゲットにしている。推定総預金額は約60億円(約4500万米ドル)に上り、新規顧客の資金で既存顧客に配当を支払う典型的なポンジスキームの特徴を示す。アフリカやアジアの規制の緩い地域を悪用し、組織は拡大を続けている。
マラッカ捜索の衝撃:ラオス経由のカード偽造
4月のマラッカでの家宅捜索で、この詐欺の核心が明らかになった。同銀行はVISAやMastercardの発行権限を持たず、提携銀行もない。代わりに、宇治田氏のチームは顧客に無断でラオスの共同開発銀行(JDB)に偽造書類で口座を開設。JDB発行の本物カードをマレーシアに輸送し、現地の作業員がチップを偽の「フォーブス・プライベート・バンク」カードに移管していた。
押収品には、JDBカード227枚、フォーブス・プライベート・バンクの偽造カード2枚、レーザープリンターやグルーガンなどの工具、そして現金が含まれる。警察当局は、これらが「日本の闇市場向け」に製造されていたと説明。この手口は、2018年の銀行設立以来継続していたとみられる。シンガポール国籍の容疑者がマラッカで逮捕されたことで、カード製造は一時停止したが、詐欺の本体は依然として稼働中だ。警察は「プレミアム」や「プラチナ」グレードの偽造カードが違法市場で流通していたと指摘する。
国境を越えた巧妙な仕組みと法の抜け穴
日本国内では、宇治田氏は未登録の外国銀行預金を販売し、法令違反を犯している。マルチレベルマーケティング(MLM)的手法で顧客を開拓し、資金はカンボジアの現地銀行口座を経由して移動。ライセンスはコモロ、カード発行はラオス、複製はマレーシア、送金はカンボジア、顧客獲得は日本──こうした国境を越えた運営構造が、規制の隙間を突いている。
コモロ諸島のライセンスは、詐欺の温床として悪名高い。国際商工会議所は、アンジュアン島を拠点とする偽銀行に警鐘を鳴らしており、コモロ中央銀行も「ムワリ国際サービス機構」などのコモロの商業銀行の銀行許認可の発行権を有することを謳う偽組織を名指しで警告。同警告書には、フォーブス・プライベートバンク・モナコは、適切な認可なしに業務を行っていると非難されている。
専門家警告:デジタル通貨が加速する詐欺の新形態
専門家らは、コロナ禍後の経済不安がこうした詐欺を助長していると分析。仮想通貨の導入は投資の魅力を高めるが、詐欺師の匿名性を強め、ハッキングリスクを増大させる。日本では小規模事業主や退職者が主な被害者で、資金喪失だけでなく、身分証明書の悪用も懸念される。
これは、伝統的な銀行詐欺にデジタル通貨を融合させた複合型スキームの台頭を象徴する。2025年の仮想通貨市場は2兆ドルを超える見込みで、国境を超えた詐欺は急速に拡大する恐れがある。日本は国内法の抜け穴を早急に塞ぎ、マレーシア、ラオス、コモロは偽造行為の徹底調査を進めるべきだ。一方、インターポールなどの国際機関の協力がなければ、国際的な資金の流れを追跡するのは難航が予想されることから、グローバルな協力が不可欠となる。
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