FII PRIORITY Asia Summit 2025 in Tokyo
令和7年12月1日、高市総理は、都内で開催されたFII PRIORITY Asia Summit 2025 in Tokyoに出席しました。
総理は講演及び質疑応答において次のように述べました。
【講演】
「アッサラーム・アライクム。Good morning, distinguished participants.こんにちは。日本国内閣総理大臣の高市早苗でございます。日本とサウジアラビアの外交関係樹立70周年という重要な年に、日本国政府を代表して、アジアで初めて、東京で開催される『FII PRIORITY Asia Summit』で、御挨拶できることを大変喜ばしく思っております。
高市内閣における成長の肝は、『危機管理投資』でございます。経済安全保障、食料安全保障、エネルギー安全保障、健康医療安全保障、国土強靱(きょうじん)化対策などの様々なリスクや社会課題に対して、官民が手を携え先手を打って行う戦略的な投資です。これは、FII(未来投資イニシアチブ)が掲げる『未来世代への投資』と軌を一にするものでございます。世界共通の課題解決に資する製品・サービス・インフラを提供できれば、更なる日本の成長にもつながります。AI(人工知能)・半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、サイバーセキュリティなどの17戦略分野を定め、大胆な投資促進、国際展開支援、人材育成、スタートアップ振興、研究開発、産学連携、国際標準化といった多角的な観点からの総合支援策を講ずることで、官民の積極投資を引き出してまいります。加えて、防衛調達も含む官公庁による調達や規制改革など新たな需要の創出や拡大策を取り入れるとともに、複数年度にわたる予算措置のコミットメントといった、投資の予見可能性の向上につながる措置によって民間投資を後押ししてまいります。これらの取組を通じて、日本経済の供給構造を強化します。世界の投資家にも信頼いただける経済を実現することで、世界の資本が流れ込む好循環を生み出してまいります。
世界に目を転じれば、我々が慣れ親しんだ自由で開かれた安定的な国際秩序は、パワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に伴い、大きく揺らいでいます。私が就任しましてから、この1か月間を通じて、ASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議、日米首脳会談(注1)、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議、G20サミットなど、首脳外交に精力的に取り組んでまいりました。世界の真ん中で咲き誇る日本外交を実現してまいります。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、そして責任あるグローバル・ガバナンスの再構築に向けて、サウジアラビアを始めとする世界の同志国と、しっかりと連携していきたいと考えています。
こうした世界情勢の下、日本も、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれています。国家安全保障戦略では、我が国の平和と安全のみならず、経済的な繁栄も含めた国益の確保を『経済安全保障』として位置づけております。とりわけ、サプライチェーンの問題が重要です。経済効率性が重視されて、国際分業化が推進されてきたために、サプライチェーンが多様化・複雑化して、重要物資を他国に過度に依存することとなった結果、そこに供給リスクが顕在化しました。ここにお集まりのビジネス界の皆様にとっても、サプライチェーン・リスクは、企業価値に直結する問題になっています。日本政府は、国際海運を支える造船能力の復活やレアアースを始めとする重要鉱物の代替供給ルートの確立など、サプライチェーン強靱化のための施策を更に強化してまいります。『危機管理投資』を大胆に推し進めることで、力強い経済成長を実現するとともに、経済安全保障の確保をより早期に確実なものとしてまいります。あわせて、同志国の企業同士、例えば、日本・サウジアラビア両国の企業間のサプライチェーン連携を促進するための取組も加速してまいります。
サウジアラビアでは、日本のマンガ・アニメが非常に人気だと伺いました。キャプテン翼、ONE PIECE、鬼滅の刃などありますけれども、本日は、『進撃の巨人』の有名なセリフを借りて、私のスピーチの結びといたします。『Just shut your mouths. And invest everything in me!!(いいから黙って、全部俺に投資しろ)』皆さん、もうお願いしたいことはお分かりだと思います。『Japan is back. Invest in Japan.』ということで、御清聴ありがとうございました。」
【質疑応答】
(FII Instituteリチャード・アティアス氏:高市総理の強い経済に向けた戦略を伺い、この会場にいる多くの方々、とりわけ日本への投資を考える方々は大変心強く感じたと思う。ただ、市場には引き続き、高市政権の「積極財政」への懸念もある。お考えを伺えないか。)
「まず、日本の財政の現状についての認識を述べます。この行き過ぎたインフレで実質的な債務圧縮が進んでいると評価するべきではありません。賃金・生産性の持続的な伸びにより名目成長率が回復し、税収が過去最高を更新しました。そして、経常黒字や厚い国内貯蓄基盤を背景に、債務残高対GDP(国内総生産)比が、これが低下しつつある状況にございます。今般の『強い経済』を実現する総合経済対策も、こうした改善の流れを土台に、危機管理投資・成長投資に、これを重点的に措置しながらも、当初予算と補正予算を合わせた通年の『補正後』の国債発行額については、昨年度より減らす姿もしっかり確保しております。今後も、常に金利などの動向に留意しながら、 財政運営をしていく考え方です。
このように、高市内閣は、『責任ある積極財政』の考え方の下、戦略的に財政出動を行うことで、『強い経済』を実現しながら、債務指標の着実な改善を続けることで、日本経済の成長力と日本財政への国内外の信認を同時に引き上げていくことを目指しております。」
(アティアス氏:日本企業の好業績の割には投資、実質賃金の上昇が十分ではない現状に、どのように取り組んでいかれるのか?)
「企業がですね、持続的(注2)な成長を実現するためには、預貯金などの経営資源を、人材投資や新事業の研究開発等の投資などに活用していくことが重要です。このため、コーポレートガバナンスコードの改訂に向けた議論を開始しました。投資家の皆様ともしっかりと対話しながら、強い経済の実現に向けて、コーポレートガバナンス改革(企業統治改革)を進めてまいります。
また、先週、政労使の意見交換を開催しました。30年以上ぶりに5パーセントを超える高水準となっている賃上げを確かなものとして定着させるために、一昨年、昨年の水準と遜色のない水準での賃上げ、とりわけ、物価上昇に負けないベースアップの実現に向けた御協力を産業界にお願いしました。
さらに、働き方改革について、私から、厚生労働大臣など関係大臣に対して、『心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討を行う』ことについて指示しております。
このように、高市内閣は、物価上昇を上回る賃上げを実現するため、それを事業者に丸投げするのではなく、継続的に事業者が賃上げできる、そういう環境を整えることこそが政府の役割である、そういう考え方の下、強力に必要な施策を展開してまいります。」
(注1)「会議」と発言しましたが、正しくは「会談」です。
(注2)「実質的」と発言しましたが、正しくは「持続的」です。
出典:首相官邸ホームページ(当該ページのURL)