地方創生伴走支援制度報告会・全体中間報告
令和7年10月1日、石破総理は、総理大臣公邸で地方創生伴走支援制度報告会・全体中間報告に出席しました。
総理は挨拶で次のように述べました
「皆様御苦労様でございます。半年がたちました伴走支援チームの活動状況を美濃市・吉野町・鹿屋市、それぞれから御報告をいただいたところであります。
最初の、10年前と違いまして、60チーム180人ということでやってまいりました。それぞれ省庁バラバラみたいなことですし、そのままずっとそっちにいるということではなくて、言葉が正しいかどうか知らないが、副業的にという形で今回の事業をスタートしておるわけでございます。溶け込み、一緒に汗をかくということであって、これは何でもそうなのですけど、アフリカとかアジアの開発もそうなのですが、一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に汗流さないと誰も共感しないよねということだと思います。いろんな国がいろんな国の支援をしているのですけども、領土を取っちゃおうとか、金もうけようとか、そんなことを言っているのは長続きしないので。自衛隊のPKO(国連平和維持活動)もそうですし、いろんな日本の各国に対する支援もそうです。私こないだ横浜であったTICAD(アフリカ開発会議)でもそういう話をして、国連総会でもその話をしたのですが、やはり日本は共に笑い、共に泣き、共に汗をするということでないと決して共感を得られないということでありまして、その趣旨にのっとって皆様方にやっていただいたからこそ、アンケートを見れば『高く評価する』。大体国がやることでこれだけ高い評価をもらうのは珍しいね。もうあまり高い評価なんかもらわないからね。今まで一番もらったのは道の駅ではないかという話ですけど。いやそれにも増すというかな、これだけ評価を頂くというのは、それぞれ皆さん方の御努力の賜物です。心から敬意を表する次第であります。
これ机上の空論でやっていても仕方がなくて、やはりどうしても霞が関と地方には断絶はあるのですよね。行ってみられるとよくわかると思うし、地方のいろんな方々、あるいは役場の職員さんからしてみると、本省に行くというのは大変なことであってね。もう本省の係長さんなんて雲の上もいいところでね、もう話をすると10倍怒鳴られるのではないか、みたいなところがありましてね。だけどそこにやはり断絶はあるのですよ、間違いなく。また県の存在とは何なのだろうということを考えるときに、県とは一体何なのだろうというのがあって、それは我々行政の都合なのでありますが、いずれにしても断絶があることは間違いないと。その間隙をいかに埋めるかということで、こういうことはやっておるところでございます。今私どもとして『若者や女性にも選ばれる地方』とは一体何なのだねということです。皆さん方がそれぞれの地域に行っていただいて、本当に若者に選ばれているかと、女性に選ばれているかというと、必ずしもそうではないのですね。それはなんでなのということなのです。
私、昨日、韓国に行っていて、李在明(イ・ジェミョン)大統領と夜いろんな話をして、夕食会もやり、そのあと2人でいろんな話もして、今朝帰ってきたところでありますが、多分御存じだと思いますが、韓国の一極集中なんて日本どころの騒ぎではないということであります。ソウル首都圏というのでしょうか。あそこに人口の6割近くが集まっておるということでありますし、ソウルの合計特殊出生率はもう0.5いくつなんていう話で、これはもう東京どころの騒ぎではないということなのであります。大統領がシャトル外交、この間、大統領が来られて今度私が行くという形になったわけですが、今度は地方の町でやろうねということで、あえてソウルではなくて釜山でやりました。釜山というのは御存じの方も多いと思います。もう福岡のすぐ先みたいな。対馬から釜山が見えるみたいなことなのですがね。ここは韓国第2の都市なのですけど、人口減少が全然止まらないということなのです。なんでここがそうなのだろうという話を大統領ともしていたのですが、どうもやはり観光都市なので、第3次産業に従事をする人が多いと。第3次産業の所得が必ずしも高くない、それが理由の1つかもしれないねというのがあって。少子化はなぜなのだろうというと、日本の人が韓国に行って、日本のこどもたちは1週間に3つぐらいお稽古事をするのですよと。ピアノと習字とそろばん。最近そろばんはやらないかな。とにかく3つぐらいお稽古事をやっているのですよと言ったら、韓国の人はぎゃっと驚いて。『本当に3つなのか、韓国は普通5つだぞ』という話なのだそうですね。とにかくこどもはめちゃくちゃ忙しいと。大変忙しいと。とにかくソウルのいい大学に入らないと、一生、これは何だろうな、成功者とは評価してもらえないと、言い方は難しいのだけども、私が言っているわけではなくて向こうの論調がそう言っているという話ですがね。それで本当に人生幸せなのかい、ということで。それは他国のことを我々は決して評価をしてはいけません。韓国は韓国で本当に、李在明大統領の下で一生懸命国づくりもやっているし。
おととい外務省が中心となって、地方創生とか人口減少とか農業の問題とか、あるいはいろんな医療とか、日本と韓国は共通している問題がこんなにたくさんあるのだねということで、改めてそういうようなプロジェクトをスタートさせることにいたしました。この人口が恐ろしく減っていくというのは、どういうことなのか。地方から人がいなくなるのはどういうことなのか。でも皆様方も地方に行ってみられて、どこが幸せなのだろうねということ、これは一人一人の価値観にもよりますが、私は『楽しい日本』と言って、むちゃくちゃ叩かれたのだけれども、うけ悪かったのですけどね。だけど『幸せな日本』とは何なのだろうか。幸せとは一体どこにあるのだろうかということではないかなというふうに思ったりしております。
随分交通も便利になりました。『地方創生1.0』というか、10年前に安倍内閣で私が初代の大臣、今、伊東大臣が大変な御尽力をいただいているわけでありますが、あのころはIT(情報技術)なんてこんなに発達していなかったです。まだガラケーの時代でした。パソコン1人1台なんて持っていなかったです。新幹線こんなに走っていませんでした。飛行機こんなに飛んでいませんでした。まだ鳥取には高速道路が十分なかったような時代でありましてね、間違いなく便利にはなったのです。便利になったら一極集中は止まったかというと、実は逆じゃないのということなのですよね。いろんなインフラ、交通手段もそうですし、通信手段もそうなのだけど、それが発達して、本当に人々は幸せになっただろうか。都市には都市の幸せがあり、地方には地方の幸せがあるのだけれども、地方において『毎日幸せだよね』と実感してくださる方をもっと増やしていかないと、この国の人口減少は止まらんということだと、私は本当につくづく思っておるところでございます。先月(注)初めに全国の知事さん、もちろん御用があって来られない方もおられましたが、29の知事さんと意見交換をいたしました。これはもう県がどうだの、国がどうだの、市町村がどうだの、みたいな話ではなくて、本当にみんなで一緒にやろうねということが大事なのだと思っております。この人口の東京一極集中を根本的に改めなければだめだと、みんなそこは一致するのです。そこは一致するのだけども、では財源の偏在というのをどう考えるのということに、それはもう私は断定的に答えを申し上げるつもりはないし、それだけの知識もないのだけど、本当にこれは『これでいいですか』ということだと思います。一人一人の権利とは何だろうと考えたときに、法の下の平等とは何だろうと考えたときに、あるいはそこまでいく話なのかもしれません。知事からは『東京への税財源の偏在を是正する必要がある』と、この意見が圧倒的に多数でした。東京の知事来なかったので、東京の知事の話聞けなかったのだけど、多分46対1だろうみたいな話でしたがね。先ほど申し上げた『若い方、女性の方々に選ばれる地方』どうしますかということ。これは当然のことなのだけど、地域における産業育成・民主導のまちづくり、政府関係機関、企業の地方移転、広域リージョン連携制度、ふるさと住民登録制度、新技術をいかした豊かな生活環境の整備、ということなのであります。6月に閣議決定いたしました『地方創生2.0』の基本構想における政策の5本柱、これに沿ったものとして、私どもとして継続して取り組んでいく必要があります。官房長官、担当大臣、知事、これが協力してですね、御存じだと思いますけど、官邸で知事との意見交換会なんてやるのですよ。大体恐縮ですが、時間の都合上お一人様2分でと言って、2分で何が言えるかと思うのだよね。これが2分30秒になるとやめてくださいというメモが後ろから出るという。これはいかんと思っておって、できれば本当に1時間でも2時間でも話をしなければいかんと思っています。これは私、地方創生大臣のときから言っていることですが『今だけ、ここだけ、あなただけ』というのがないところがあるとは私は思わない。1,718市町村あって皆さん方が行かれて、『今だけですよ』と、『ここだけにあるものですよ』と、『あなただけに提供するサービスですよ』というのを、本当にギリギリどこまで考えていますかということなのだと思っているのですよ。
別に私、JR九州の回し者でも何でもないのですけどね。地方創生大臣のときに『ななつ星』という、乗った人いる?いたら手挙げて。一人もいない。佐藤さん乗ったことない?ないの。あれ高いんだよね。なんかすごい高い。当時でも一番高いのは、お一人様1泊2日だか、2泊3日だか、ウン10万したのだと思うのです。切符がめちゃくちゃ売れるわけですよ、プラチナチケットみたいにね。私は乗ったには乗った。お前またズルして乗りやがってというのはそうではなくて、テレビ番組の取材で乗っただけの話なのですがね。とにかく社長が『世界で一番すばらしい列車を作ってみせる』と。日本で一番ではなくて『世界で一番すばらしい列車を作ってみせる』ということで水戸岡先生が設計した、確かに世界で一番すばらしい列車なのです。クルーも、乗務員も本当にここまで気が付くかねというほど気を遣ってくれる。切符は抽選です。当たりました。電話がかかります。下関の林様、おめでとうございますと。何月何日『ななつ星』の切符が当たりましたと。ついてはお食事は何が召し上がりたいですかと。お嫌いな食材は何ですか、どの料理が召し上がりたいですかといって、まず食べたいものを聞くのですって。その次に、どこの景色が見たいですかと聞くのですって。つまり、あの列車、別に速く行くためだったらあんなもの乗らないですから、誰も。ここはゆっくり走ってもいいとダイヤが許す区間で、綺麗な景色があるところはゆっくり走ってくれるのですって。ここはあなただけに見せてあげるのですよということなのですって。そういう事細かにいろんなことを聞いてくれる。最後に聞くのが、ところで林様と、奥様との思い出の歌は何ですかと、こう聞いてくるのですね。いやいや、大学時代にこの歌一緒に歌ったんだとかね。そうでございますかという話になって、食事の時間になって、ダイニングカーに行くわけですよ。着飾って。そうするとアップライトピアノが置いてあって、ピアノ弾きがいて、その思い出の歌を弾いてくれるのだよね。これはね、どんな夫婦も必ず仲良くなるという必殺技なのだそうですよ。もう官房長官だったら自分で弾くのだろうけどね。というような話でね。それは、私は別にJRから何貰ったわけでもないのだが、どうしたらその人が本当に喜んでくれるだろうかというのを、徹底的に考えるというのは『今だけ、ここだけ、あなただけ』というものなのだろうと思っているし、それはもう何でしょうか、鹿屋にしても吉野にしても、あるいは美濃にしても『今だけ、ここだけ、あなただけ』となるので、皆さん方の努力というのは、こうやって結実しつつあるのだろうというふうに思っておるところでございます。
もう1つこれも前回申し上げたと思いますが、『やりっ放しの行政、頼りっ放しの民間、全然無関心の市民』これが三位一体になると絶対失敗する。これはそういうふうに決まっとるわけであります。ひょっとしたら行政はやりっ放しではないかと、民間はとにかく補助金ちょうだいという話ではないのかと。市民は一体それって何ですかみたいなことではないのか。ですから皆さん方にお願いして、テレビとか新聞とか地元のイベントとかいっぱい出てくださいね、というふうにお願いをいたしました。国は本気だねと、本気で自分たちの町、自分たちの集落、なんか行ってみて、何かこう何でしょう。刹那的な、そういう雰囲気ってありませんか。もうこの町なくなってもいいやと、この村なくなってもいいやみたいな、私は時々地方に行くとそういう刹那的な感じを、受けないことはありません。そうじゃないのだと。国は一緒にやるのだという思い。そしてそれぞれの人たちが『ここに住んで幸せだったね』と。これが関係人口ということで、そこに住まなくてもいいのです。でも『ここにいる幸せを是非人にも分けてあげたいね』と、そういうような日本を創っていくために、すみません、なんか演説調になりまして大変失礼をいたしましたが。あと半年、皆様のお力を心から期待して、お話を終わります。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。」
(注)「今月」と発言しましたが、正しくは「先月」です。
出典:首相官邸ホームページ(当該ページのURL)